2014年05月23日

門前の遊郭、池畔の茶屋(01) へび道抜けて根津神社

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 不忍通りを横切り、参道入口に向かいながら周囲を見渡すと、真新しいビルの間に古色蒼然とした店舗や家屋がキリリと建っていて、かつての賑わいを彷彿とさせる。

 しばらく歩くと、ゆるやかな勾配が始まる。森鷗外が小説『青年』の中で「割合に幅の広い此坂はSの字をぞんぞいに書いたやうに屈曲して附いている」と書いたことから「S坂」と呼ばれるようになった坂だ。

 もっとも、正しくは新坂。あるいは権現坂。さすがに明治とは異なり「割合に幅の広い此坂」とは云えないほどの路地。でも、神社の人気は高く、ウィークデイなのに行き交う人が多いのが印象的だ。

【Photo】根津神社の表参道口。参道の先が大きく右側にカーブしているので全体をうかがい知ることができないが、鬱蒼とした樹木が境内の広さを予感させる。

【Map】Google Mapの画像。S坂(新坂、権現坂)を挟んで東京大学と隣接。

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2014年05月24日

門前の遊郭、池畔の茶屋(02) 権現様惣門前は割床なし

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 根津神社の表参道は、Sの字に入る手前。かつて、このあたりは根津門前町と呼ばれ、江戸有数の岡場所として賑わったところ。

『花知留佐登(はなちるさと)』という書物に「根津。権現様惣門前。左右前後建ちならぶ事ひつひつなり。金二朱。五百文。六百文。寝間座敷にして客多くある節割床になし、随分よろしく、何事によらず女風俗も格好よろしく、茶屋などにより送り客もこれあり、芸者女男とも金二朱」と書かれている。

 割床とは、大部屋の一室を屏風などで仕切った最も下級のもののこと。それがないから「随分よろしく」というわけ。

【Photo】根津神社表参道口の前。住所は根津一丁目だ。

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2014年05月25日

門前の遊郭、池畔の茶屋(03) 帝大のおかげで遊郭撤去

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 私娼の集まる岡場所だった根津遊郭は大盛況。格式および玉代高く、しきたり堅苦しい官許の吉原とくらべ、格式および玉代安く、格式張らない根津が流行らないわけがない。

 ところが天保13年(1842年)8月、水野忠邦による天保の改革(綱紀粛正と奢侈禁止)でお取り潰し。官許ではなくカンキョ(閑古)鳥が鳴くようになってしまった。吉原火事の際、一時的に仮宅になったことがあったにしろ、静かな門前町に戻ったのだ。

 ただし、それも長くは続かない。慶応4年(1868年)、あらためて遊郭建設。江戸幕府陸軍奉行が許可したらしい。

 ところが明治21年(1888年)6月末日をもって全面撤去。近くに帝大(同17年設置)があり、風紀上好ましくないという理由だったようだ。それでも営業を続けたいという業者には、洲崎(現・江東区東陽)に移転することを許可。敷地5万坪の大遊郭だ。

 戦後は「洲崎パラダイス」と呼ばれるようになったが、昭和33年(1958年)4月1日の売春防止法施行により、遊郭全滅。芝木好子に同名の小説あり。

【Photo】町内に立てられていた案内板。下方が北。根津神社と東京帝国大学の位置関係がよく分かる。

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2014年05月26日

門前の遊郭、池畔の茶屋(04) 楼門とつつじ苑

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 さて、根津神社。表参道口の大鳥居をくぐり、神橋を渡ると正面に楼門が現れる。国の重要文化財に指定されているらしい。

 神社のHPに「権現造りの本殿・幣殿・拝殿・唐門・西門・透塀・楼門の全てが欠けずに現存」とあったが、欠けがないだけでなく、美しさを保っているから驚いた。

 右側の随身は水戸光圀公がモデル。歴代水戸黄門役の、いずれにも似ていない。テレビの話だけど。

 境内にある「つつじ苑」は約2000坪。約100種3000株のツツジが植えられていて、一斉に開花する春には花見客で満員御礼になる。その時期に来たことがないが、甘酒茶屋などの露店が並ぶらしい。

 残念ながら、このときは新緑ツツジ。開花時期にしか入苑することが出来ないから、石垣の手前から眺めるだけ。

【Photo(上)】楼門。建立されたのは宝永3年(1706年)。五代将軍綱吉の時代だから、300年以上前の建造物ということになる。

【Photo(下)】つつじ苑。開花シーズンになると入苑可能。入苑料200円也。

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2014年05月27日

門前の遊郭、池畔の茶屋(05) 乙女稲荷神社の前に溝のような池

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「小さい門を左の方へ出ると、溝のような池があって、向うの小高い処には常磐木の間に葉の黄ばんだ木の雑った木立がある。濁ってきたない池の水の、所々に泡の浮いているのを見ると、厭になったので、急いで裏門を出た」(森鷗外『青年』)

 西門の左側。乙女稲荷神社の前に「溝のような池」があった。

 泡は浮いていなかったが、濁ってきたない。でも、緋鯉が生きているくらいだから、鷗外の時代よりもきれいなのかも。

 急いで裏門を出るようなことはしなかった。

【Photo(上)】溝のような池。流路ではないようだが、水場があると清涼感が増す感じがする。綺麗な水ではないけど。

【Photo(下)】乙女稲荷神社からの眺め。

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